ファッションと環境問題の現状|世界のファッション産業が抱える課題

ファッションは自己表現の手段であり、私たちのライフスタイルの一部です。しかし、華やかなファッション産業の裏側では、環境への深刻な影響が広がっているのをご存知でしょうか。特に「ファッションと環境問題」は、CO2排出、水資源の消費、衣類廃棄の3つの大きな課題に直結しています。 本記事では、環境省のデータも交えながら、ファッション業界が抱える環境問題の現状とサステナブルな未来への選択肢について解説します。


もくじ

ファッション産業の環境負荷:問題の現状と課題

ファッションと環境問題が生まれる背景

ファッション産業では、流行の変化が速く、消費者も短期間で衣類を買い替える傾向が強くなっています。特に「ファストファッション」と呼ばれる大量生産・大量消費のシステムは、低価格で手軽に流行を取り入れられる反面、環境に多大な負荷を与えています


ファッション産業がもたらすCO2排出の現状

衣類製造の過程では、大量のエネルギーが必要であり、世界全体の温室効果ガス排出量の約8%をファッション産業が占めているとされています。環境省のデータによると、特に石油由来のポリエステル繊維などは生産時に多くのCO2を排出するうえ、分解されるまで数百年かかります。こうした合成繊維の使用が続く限り、CO2排出量の削減は難しい状況です。

(出典:環境省 ファッションと環境

カーボンフットプリント*削減の取り組み

近年では、一部の企業がCO2排出量の削減を目指し、再生エネルギーを利用した製造や、製品のライフサイクル全体にわたる排出量の見直しを行っています。 例えば、日本企業の中には、使用済み衣類を燃料としてリサイクルし、エネルギーに変換する取り組みを進めているところもあります。 このような「カーボンニュートラル*」を目指す動きは、ファッション業界全体の持続可能な未来に向けた重要な一歩です。

*カーボンフットプリント:製品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの総量を数値化したもの。環境への影響を見える化し、削減を目指す指標。

*カーボンニュートラル:活動に伴うCO₂排出量と、植林などによって吸収されるCO₂量を相殺し、実質的にCO₂排出をゼロにする取り組み。


大量の水を必要とする衣類の製造工程

ファッション産業が水資源に与える影響も深刻です。環境省によると、Tシャツ1枚の製造に約2,300リットルの水が必要とされ、これは一人が2~3年で飲む水量に匹敵します。また、染色や洗浄の過程で排出される廃水には化学物質が含まれており、河川や海洋を汚染し、生態系に悪影響を及ぼすことが問題視されています。

(出典:環境省|ファッションと環境

水消費を減らすための具体的なアプローチ

いくつかのブランドは、染色プロセスの見直しや水の再利用技術を導入し、持続可能な水資源管理に取り組んでいます。日本でも、環境に配慮した技術を使用し、染色工程での水使用を99%以上削減する技術も出てきています。また、再生水を使用する技術や、「水を使わないデニム加工技術」も注目されています。

(出典:BLUE CYCLE JEANS:ジーンズを、地球品質へ。 | 服のチカラを、社会のチカラに。 UNIQLO Sustainability


衣類廃棄量の増加と廃棄問題

ファッションの大量消費が招く廃棄問題

日本では、毎年100万トン以上の衣類が廃棄されていると言われており、そのうちの多くが焼却や埋立処分されています。特にファストファッションによる大量消費が進む中、廃棄量の増加が深刻な課題となっており、多くの衣類がリサイクルされずに捨てられています。

衣類リサイクルと循環型経済へのシフト

環境省が推奨する「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」の理念に基づき、衣類の廃棄を抑えるための取り組みが広がっています。日本では、不要な衣類を回収して新しい繊維に再利用するリサイクル技術が進展しており、一部のアパレル企業は店舗での回収プログラムを導入しています。また、消費者向けに「洋服レンタルサービス」や「古着リサイクル」など、購入せずに流行を楽しむ選択肢も増えています。


具体的な解決策とサステナブルファッションへのアプローチ

1. 環境に配慮した素材の選択

オーガニックコットンやリサイクルポリエステルなど、環境負荷の低い素材を選ぶことがサステナブルなファッションの鍵となります。特にオーガニックコットンは、農薬や化学肥料を使わず、通常のコットンに比べて水消費量も削減できるため、より持続可能な素材とされています。環境省も「エコマーク*」や「GOTS認証*」などの基準をクリアした素材の使用を推奨しています。

*エコマーク:環境省の認証で、製品やサービスが環境負荷を低減していることを示す日本独自のエコラベル。環境に配慮した商品選びの目安として活用される。
*GOTS認証(Global Organic Textile Standard):オーガニック繊維製品の国際認証で、原料の有機性と製造過程での環境・社会的配慮が一定基準を満たしていることを証明するもの。

2. 購入頻度を減らし、長く使えるファッションの選択

環境省が提唱する「少ないもので豊かに暮らす」ライフスタイルに沿って、流行に左右されず、自分のスタイルに合ったアイテムを長く愛用することも、環境負荷の軽減につながります。また、ファッションのリペアサービスやメンテナンス方法を学び、長く使うことで資源の無駄を減らしましょう。
1年長く着ることで、日本全体として4万トン以上の廃棄量の削減に繋がります。

(出典:環境省|サステナブルファッション

3. アップサイクルやリサイクルの推進

不要になった衣類を捨てるのではなく、アップサイクルやリサイクルの推進が重要です。環境省も消費者に対して、「捨てる前にリサイクルやリユースを検討する」ことを提案しています。また、家庭での簡単なリメイクや古着を利用したDIYも、アップサイクルの一環として楽しめる方法です。日本でも近年、アップサイクルがトレンドになりつつあり、手軽なリメイクアイデアを取り入れる若者が増えています。


まとめ

ファッションと環境問題は、私たちが日常的に意識すべき重要なテーマです。衣類を購入する際は、その背景にある環境負荷やサステナブルな選択肢について考えることが大切です。例えば、リサイクル可能な素材を選ぶ、長持ちするデザインを選ぶ、そして不要な衣類を寄付やリサイクルに回すといった行動が、未来の地球環境にとって大きな違いを生み出します。一人ひとりが少しずつ意識を持つことで、ファッション業界全体が持続可能な未来に向かって進むことができます。今後のファッション選びに、ぜひ環境に配慮した選択を取り入れてください。

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この記事を書いた人

私たちeco living編集部は、脱炭素アドバイザー ベーシックの資格を保有した編集者が、持続可能な暮らしを提案し、環境に配慮したライフスタイルをサポートするために日々記事を発信しています。地球に優しい商品やサービスの紹介から、エコな生活のヒントまで、皆さまのより良い未来作りのお手伝いを目指しています。

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