サステナブルファッションとは?
サステナブルファッションは、地球と社会に優しいファッションの在り方です。環境保護や社会的責任を重視しながら、持続可能なファッションの形を追求します。日本でも最近、エコ意識の高まりに伴い、サステナブルファッションへの関心が急速に広がっています。
ファッション産業における環境問題の現状
ファッション産業が環境に与える負荷は大きく、私たちが日常で身に着ける衣類が生産・廃棄される過程で多くの資源が消費されています。以下のデータは、日本国内での衣類供給・廃棄に関する現状を反映しており、持続可能な未来に向けて解決すべき課題が多く残されていることを示しています。
(出典:環境省|サステナブルファッション)
1. 輸入依存とCO₂排出量
日本で流通している衣類の98%が海外からの輸入に依存しています。この輸送の過程で多量のCO₂が排出されており、日本のファッション産業におけるCO₂排出量の90%以上が原材料調達や製造段階で発生しています。このため、環境負荷の大部分が日本国外で生じており、輸入依存からの脱却や、より環境に配慮した輸送方法の採用が必要とされています。
2. 過剰供給と廃棄
日本では1990年と比較して衣類の供給量が約1.8倍に増加し、2021年には約36億着が供給されていますが、購入量は横ばいのままです。このギャップにより、大量の衣類が在庫や廃棄物として処理されることが多く、適量生産への移行が急務とされています。また、未使用のまま家庭内に眠っている衣類も平均して一人あたり約35枚に上り、循環型ファッションの普及が求められます。
3. 廃棄物処理とリサイクルの課題
日本の家庭から毎年約45万トンの衣類が廃棄されています。これは大型トラック約120台分の衣類が毎日焼却または埋め立て処分されている量に相当します。リサイクルやリユースの推進により、まだ使用可能な衣類の資源循環を促進する必要がありますが、現在は手放された衣類のうちリサイクルやリユースされるのは約34%にとどまり、残りは廃棄されています。すべての衣類が回収・リサイクルされれば、年間約2,500万トンのCO₂排出を削減できる可能性があります。
4. 水資源の過剰消費
衣類の生産には膨大な水が必要とされており、日本国内で供給される衣類の製造においても、年間約83億立方メートルの水が消費されています。そのうち約9割は綿の栽培によるものです。もしすべての綿をオーガニックコットンに切り替えた場合、年間で約67億立方メートルの水が節約でき、これは東京都で年間に利用される水量の約4倍以上に相当します。
5. 衣類の使用期間の延長の重要性
現在ある衣類を1年長く使用することで、日本全体で約3万トンの衣類廃棄を削減することが可能です。衣類の使用期間を延ばすことは、廃棄物の削減と環境負荷の軽減に直接的に貢献するため、ファッションの持続可能性において重要なアプローチの一つです。消費者一人ひとりが衣類を大切にし、リペアやメンテナンスを行うことで、循環型ファッションの推進が期待されます。
これらのデータからも、ファッション産業が環境に及ぼす影響がいかに大きいかがわかります。持続可能な未来のためには、企業による生産工程の見直しと、消費者によるリサイクルや再利用への積極的な参加が求められています。
サステナブルファッションの実現に向けた企業・ブランドの取り組み
現在、ファッション業界では環境問題を解決し、持続可能な未来を目指すためにさまざまな企業が努力をしています。以下は代表的な取り組みのいくつかです。
1. リサイクル・アップサイクル素材の使用
多くのブランドが、リサイクル素材やアップサイクル素材を活用しています。たとえば、ナイキやアディダスは廃棄プラスチックや古着を再利用し、新しい製品に加工する技術を導入しています。これにより、原材料の使用を抑え、廃棄物の削減に貢献しています。
2. クローズド・ループ生産
一部のブランドでは、製品の生産から廃棄に至るまでを循環させる「クローズド・ループ」方式を採用しています。たとえば、パタゴニアは、製品を修理して再販するサービスや、古くなった製品の回収・再利用プログラムを実施し、製品ライフサイクルを最大限に延ばしています。
3. エシカルファッションとフェアトレードの推進
社会的な責任を果たすために、フェアトレードの考え方を取り入れた生産体制を構築するブランドも増えています。たとえば、英ブランドのピープルツリーは、発展途上国の職人に公正な賃金を支払い、環境に配慮した素材を使用することで、持続可能なファッションを推進しています。
4. 再生可能エネルギーの活用
製造過程でのエネルギー使用量を抑えるため、再生可能エネルギーを導入する企業も増加しています。たとえば、H&Mグループは、再生可能エネルギーによる工場運営を進め、カーボンニュートラルを目指した取り組みを行っています。
5. 廃棄物削減への積極的な取り組み
一部の企業では、生産過程で発生する布の端材や不良品の廃棄を削減するため、あらかじめ生産過程での無駄を抑える「ゼロウェイストデザイン」を導入しています。また、端材を活用した小物製品の生産など、廃棄物を減らすための工夫もされています。
サステナブルファッションがもたらすメリット
サステナブルファッションの普及は、消費者・企業・社会全体にさまざまなメリットをもたらします。
- 環境負荷の軽減
例えば、リサイクル素材の使用やエコフレンドリーな生産プロセスにより、ファッション業界が地球に与えるダメージが減少します。廃棄物の削減や温室効果ガスの抑制につながり、気候変動対策にも貢献することが期待されています。 - 倫理的消費の推進
エシカルなファッションを選ぶことで、消費者が生産背景を意識した購買行動をとるようになります。これにより、労働者の権利や生活水準の向上、地域経済の発展が促進されるなど、持続可能な社会づくりに貢献できます。
サステナブルファッションを日常生活に取り入れる方法
サステナブルファッションは、私たち一人ひとりが日常生活で意識的な選択をすることで取り入れられます。ここでは、具体的な行動やアクションをさらに深掘りしてご紹介します。
1. 「長く着る」習慣を持つ
衣類を長く着続けることは、サステナブルファッションの基本の一つです。たとえば、少なくとも1年長く服を使い続けることで、日本全体で年間約3万トンの衣類廃棄を減らせるとされています。衣類のメンテナンスを心がけ、定期的に洗濯方法や保管方法を見直すことで、服の寿命を延ばすことができます。さらに、リペアや補修も積極的に取り入れましょう。近年では、リペアサービスを提供する店舗も増えており、簡単な縫い直しやボタンの交換で、愛着ある衣類を長持ちさせることが可能です。
2. クローゼットの中を定期的に見直し、不要な服を循環させる
家庭には「一度も着ていない服」が平均35枚あると言われています。まずはクローゼットを見直し、何が本当に必要かを把握しましょう。そして、不要な衣類は捨てるのではなく、寄付やリサイクルショップ、オンラインのフリマアプリでの販売など、他の人に再利用してもらう方法を選びましょう。使わない服を循環させることで、無駄な廃棄を減らし、新たな衣類の製造による環境負荷も抑えることができます。
3. サステナブルブランドやエシカルファッションを選ぶ
サステナブルな素材を使用し、エシカルな製造方法を採用しているブランドを選ぶことも重要です。近年、多くのブランドがオーガニックコットンやリサイクル素材を使ったアイテムを提供しており、購入する際にラベルや素材表示を確認するだけで、サステナブルな選択が可能です。また、ブランドのウェブサイトなどで「サステナビリティポリシー」をチェックし、そのブランドが具体的にどのような取り組みを行っているか確認することも、賢い消費者としての一歩です。
4. リサイクルやリユースに参加する
多くのファッションブランドや小売店で、使用済み衣類の回収やリサイクルプログラムが実施されています。不要な衣類をリサイクル回収ボックスに入れることで、素材が再利用され、新しい製品に生まれ変わる可能性があります。また、古着をリユースするためのフリマアプリやリサイクルショップも活用しましょう。リサイクルに参加することで、衣類の廃棄量削減に貢献できます。
5. サステナブルな洗濯方法を取り入れる
洗濯の際にも環境への配慮を忘れないことが大切です。低温での洗濯や自然乾燥、環境に優しい洗剤の使用は、エネルギー消費の削減につながります。また、合成繊維の衣類からは洗濯時に「マイクロプラスチック」と呼ばれる微細なプラスチック繊維が流出するため、マイクロプラスチックフィルターの使用も推奨されます。これらの対策により、洗濯による環境負荷を軽減することが可能です。
6. 適量消費の意識を持つ
購入時に本当に必要なものかを見極め、衝動買いを避けることもサステナブルファッションの実践に繋がります。ファッションの流行に流されず、自分にとって本当に必要で愛着の湧くアイテムを選びましょう。「少ないアイテムで多くの着こなしが楽しめる」というミニマリストなスタイルや、カプセルワードローブを取り入れることで、服の量を抑えつつ豊かなファッションライフを実現できます。
7. アップサイクルで自分だけのスタイルを作る
衣類のアップサイクルとは、古くなった服や破れた服を再デザインして、新しい価値を持つアイテムに生まれ変わらせることです。例えば、古いデニムをバッグやクッションカバーに作り替えたり、Tシャツをリメイクしてエコバッグにしたりするなど、創造的な方法で自分だけのスタイルを楽しむことができます。これにより、廃棄を減らしながら個性的なファッションを実現できるのも魅力です。
8. イベントやシェアリングサービスを活用する
特別なイベントやパーティーのために新しい服を購入するのではなく、レンタルサービスやシェアリングサービスを利用するのも一つの手段です。レンタルを利用すれば、特定の機会に合わせた高品質な服を着用でき、不要な購入を避けることができます。また、シェアリングサービスではファッションを循環させることで資源の無駄を抑えられます。イベントの衣装やトレンドアイテムは、必要に応じて借りるという意識もサステナブルファッションの取り組みの一つです。
これらの取り組みを実行することで、日常生活にサステナブルファッションを無理なく取り入れることができます。小さな一歩を積み重ねることで、個人の行動が社会全体の変化につながり、より持続可能な未来の実現に貢献できます。
まとめ
サステナブルファッションは、これからの社会にとって欠かせない概念として成長し続けると考えられます。日本国内でも、循環型経済の推進や環境認証取得を目指す企業が増え、エシカルな消費が広がっています。また、消費者の認識も高まりつつあり、ファッションを通じて社会や環境に貢献する意識が浸透してきています。
私たち一人ひとりの選択が、ファッション業界の未来を形作る大きな力となります。地球に優しいファッションを身近に感じ、サステナブルなライフスタイルを選ぶことが未来の世代へ美しい地球を引き継ぐ一歩につながるでしょう。