サステナブルファッションに注目が集まる今、素材の選択が環境への影響を大きく左右します。多くの人が普段着ている服の素材がどのように作られ、どのような環境負荷を持っているかを知ることは、エコで持続可能な生活スタイルに繋がります。
そこで今回は、注目のエコ素材を10種類厳選し、その特性と環境への配慮を解説します。日々のファッションでエコな選択をしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
世界の主要繊維の生産割合
世界の繊維産業における主要な素材とその使用割合は、以下の通りです。
- 化学繊維:
全体の約66% 国内で使用さる繊維の中で、特にポリエステルやナイロンなどの合成繊維が多く、耐久性や速乾性が求められる衣類や工業製品に幅広く利用されています。 - 再生繊維:
リヨセルやテンセルに代表される再生セルロース繊維は約6%です。テンセルは特に環境負荷が少ないため、サステナブルファッションの素材として人気が高まっています。 - 天然繊維:
全体の約27%で、そのうち最も多いのは綿(コットン)です。コットンは柔らかく肌触りが良いため、カジュアルウェアやベビー服、インナーなどに多用されています。 - その他の天然繊維(麻、ウールなど):
残りの約1.4%を占め、夏用衣料としてのリネンや麻、冬用のウールなどが含まれます。
日本のファッション産業は依然として化学繊維に依存していますが、持続可能性の観点から天然繊維や再生繊維へのシフトが進みつつあります。
(出典:日本化学繊維協会|内外の化学繊維生産動向- 2 0 1 7年 -)
エコな素材全般に言えるメリットとデメリット
サステナブル素材は、環境に優しい選択として注目されていますが、その特性には一長一短があります。以下に、エコ素材の一般的なメリットとデメリットを分かりやすくまとめます。
メリット
- 環境への負荷が少ない
エコな素材は、生産から廃棄までのライフサイクルにおいて環境への負荷が少なく抑えられています。例えば、オーガニックコットンは農薬や化学肥料を使用せず、リサイクルポリエステルは廃プラスチックを再利用することでごみの削減に貢献しています。 - 生分解性が高いものが多い
麻やウールなど天然素材は自然に分解されるため、廃棄後も環境に残りにくい特徴があります。これにより、海洋汚染や土壌汚染のリスクが軽減されます。 - 持続可能な生産が可能
再生繊維やリサイクル素材は、限られた資源を有効に使うため、地球資源の消耗を防ぎます。例えば、テンセルはユーカリなど成長の早い樹木から作られ、短期間で再生可能です。 - 高い品質・快適な着心地
多くのエコ素材は肌触りがよく、通気性や吸湿性に優れているものが多いです。オーガニックコットンやリネンは特に肌に優しく、夏でも快適に着られるのが特徴です。
デメリット
- 価格が高くなる傾向がある
環境に配慮した生産には手間やコストがかかるため、エコな素材は一般的に価格が高くなる傾向があります。特にオーガニック素材は農薬や化学肥料を使わず手作業が多く、栽培コストが上がります。 - 耐久性や機能性に制限があること
天然素材は一般的に耐久性がやや低く、化学繊維に比べてシワができやすかったり、洗濯に注意が必要なものもあります。例えば、オーガニックコットンやリネンは頻繁な洗濯で傷みやすいため、取り扱いに気を使う必要があります。 - 生産量が限られている
エコな素材は大量生産が難しいものもあり、需要に対して供給が追いつかない場合があります。また、急速な需要増加により、一部の素材は安定した供給が難しくなるリスクも抱えています。 - サステナブル性に差がある
「エコ」といっても素材ごとにサステナブル性にばらつきがあり、環境への負荷が全くないわけではありません。リサイクルポリエステルなどは石油由来のプラスチックが原料のため、生産にはエネルギーが必要であり、完全に環境負荷がゼロにはなりません。
エコ素材のメリットとデメリットを理解することで、どのような特性が自分のニーズに合っているかを考え、より持続可能な選択がしやすくなるでしょう。
エコな繊維とその特徴を解説
オーガニックコットン
オーガニックコットンは、一般的なコットンと異なり、化学肥料や農薬を使わずに栽培されるため、環境に優しい素材として知られています。通常のコットン栽培に比べて、土壌や水質への影響が少なく、生態系の保護にも貢献します。また、肌に優しいため敏感肌の方にもおすすめです。
- 特性:柔らかく肌触りが良い
- 生産プロセス:化学肥料・農薬を使わない有機栽培
- 環境への影響:水資源を節約し、土壌や生態系に優しい
オーガニックコットンを使用した服
オーガニックマガジン | オルジェナが紹介するシンプルで上質なオーガニックコットン製のカットソー。肌に優しく柔らかな着心地が特徴です。
テンセル(TENCEL™)
テンセルはユーカリの木から作られる再生繊維で、繊維の柔らかさやしなやかさが特徴です。テンセルの製造プロセスでは、化学薬品を循環利用することで廃棄物を減らし、持続可能な生産が可能です。
- 特性:滑らかで通気性が良く、吸湿性も優れている
- 生産プロセス:ユーカリから抽出したセルロースを用い、環境負荷の少ない循環システム
- 環境への影響:化学薬品の再利用が可能で、資源を無駄にしない
テンセル(Tencel)を使用した服
しまむらのテンセル素材を使ったジャケットは、滑らかな質感と通気性が良く、カジュアルコーデにぴったりです。
リサイクルポリエステル
リサイクルポリエステルは、廃棄されたペットボトルや古い衣類から再利用されたポリエステル素材です。新たな資源の使用を減らし、ゴミの削減に繋がるため、エコな素材として注目されています。
- 特性:耐久性があり、速乾性がある
- 生産プロセス:廃プラスチックをリサイクルして繊維化
- 環境への影響:プラスチックごみの削減と資源の有効活用
リサイクルポリエステルを使用した服
パタゴニアのリサイクルポリエステル製アウター。廃プラスチックを利用した環境配慮型の機能的なデザインです。
ヘンプ(麻)
ヘンプは成長が早く、農薬や水をほとんど必要としないため、非常にエコな素材です。繊維が丈夫で、天然の抗菌性があり、長期間使用できるのが特徴です。
- 特性:軽量で通気性が良く、耐久性が高い
- 生産プロセス:水や農薬をほとんど使用しない
- 環境への影響:少ない水で成長し、土壌の浄化効果がある
ヘンプ(麻)を使用した服
GOHEMPが手がけるヘンプ製シャツは、軽くて通気性が良く、リラックスしたスタイルに最適です。
リネン(亜麻)
リネンは、涼しさと清涼感が特徴のエコ素材で、特に夏服に多く使われます。亜麻の繊維から作られるリネンは、成長過程での水の使用量が少なく、環境に優しいとされています。
- 特性:吸湿性と通気性に優れ、涼しい
- 生産プロセス:自然乾燥ができ、エネルギー消費が少ない
- 環境への影響:少ない水とエネルギーで生産可能
リネン(Linen)を使用した服
ユニクロ/GUのシンプルなリネンシャツは、吸湿性が良く涼しいため夏のおしゃれに活躍します。
オーガニックウール
オーガニックウールは、羊毛を化学処理せずに加工することで作られるウール素材です。羊の飼育から繊維の加工に至るまで、環境に優しいプロセスが確保されています。
- 特性:保温性が高く、自然な抗菌性がある
- 生産プロセス:農薬や抗生物質を使用せず、自然な飼育環境で育てられた羊から採取
- 環境への影響:化学薬品を使わず、環境と動物福祉に配慮
オーガニックウールを使用した服
シチュヴが紹介するオーガニックウール製のセーターは、暖かさと通気性が特徴で、冬の定番アイテムとして人気です。
ピニャテックス(Pinatex)
ピニャテックスはパイナップルの葉から作られる新しいサステナブル素材で、レザーの代替品として注目されています。食品廃棄物を再利用して作られるため、環境負荷が非常に少ない素材です。
- 特性:軽量で柔軟性があり、独特の質感
- 生産プロセス:パイナップル農業の副産物を再利用
- 環境への影響:農業廃棄物の削減と新たな資源を必要としない
ピニャテックス(Pinatex)を使用した服
étulが提供するピニャテックス製バッグは、パイナップル由来の素材で軽量かつ柔軟性に優れています。
コーヒー繊維
コーヒー繊維は、コーヒー豆のかすをリサイクルして作られる新しい繊維素材です。消臭効果や速乾性があり、スポーツウェアなどに利用されています。
- 特性:消臭性があり、速乾性に優れている
- 生産プロセス:コーヒーのかすを繊維化し、無駄を減らす
- 環境への影響:廃棄物のリサイクルで、資源の有効活用が可能
コーヒー繊維を使用した服
ECOALFのコーヒー繊維ジャケットは、廃棄コーヒーかすをリサイクルし、消臭性と速乾性を備えたエコ素材アイテムです。(1着に約40杯分のコーヒーかすを原料として制作)
オレンジファイバー
オレンジファイバーは、オレンジの皮をリサイクルして作られる素材で、シルクのような質感が特徴です。イタリアのファッション業界でも注目されており、エレガントな素材として人気です。
フェラガモのコレクションなどにも使用された素材です。
- 特性:滑らかでシルクに似た質感
- 生産プロセス:オレンジの搾りかすを再利用
- 環境への影響:食品廃棄物を減らし、新たな材料を使用しない
オレンジファイバーを使用したネクタイ
FLOENS TOKYOのオレンジファイバー製ドレスは、シルクのような滑らかさで高級感があり、特別なシーンにおすすめです。フェラガモのコレクションなどにも使用された素材です!
サボテンレザー
サボテンレザーはサボテンから作られる植物由来のレザーで、動物由来の革の代替品として人気です。生産にほとんど水を必要としない点で環境に優しい素材です。
- 特性:柔らかく、軽量で、耐久性がある
- 生産プロセス:サボテンを収穫し、加工
- 環境への影響:少量の水で栽培可能で、動物の犠牲を伴わない
サボテンレザーを使用した財布
ハッピーキヌアが紹介するサボテンレザー製の財布は、少量の水で育つサボテンを使った環境に優しいヴィーガンレザーアイテムです。
まとめ|サステナブル素材を選ぶ意味
サステナブルファッションのためには、素材選びが重要です。今回紹介した素材は、環境への負荷を最小限に抑えるよう設計されており、エコな生活スタイルをサポートしてくれます。次に洋服を選ぶ際には、素材にも目を向け、地球と共に歩むファッションを楽しんでみてください。