「持続可能なファッション政策」とは?3省庁が連携して推進する政策をわかりやすく解説

もくじ

サステナブルファッションの現状と課題

日本国内で「サステナブルファッション」や「エシカル消費」への関心が高まる一方、若者の多くは「参加方法がわからない」という理由で取り組めていない状況が明らかになっています。

消費者白書によると、若者がサステナブルな取り組みを実践しづらい主な理由は次の通りです。

  • 参加方法がわからない:10代後半の56.7%、20代の56.8%が回答。
  • 身近に製品やサービスがない:10代後半の44.2%、20代の35.8%が回答。
  • 周りに取り組んでいる人がいない:20代の34.6%が回答(全体の26.5%を上回る結果)。

一方、若者が実際に行っているサステナブルファッションの取り組みには、以下のような行動が含まれています。

  • 古着の活用:10代後半の20.0%、20代の19.9%が古着を購入。
  • 衣服のリサイクルや譲渡:10代後半の62.1%が「着なくなった衣服を譲る」などの行動を実施。
  • リサイクルショップやアウトレットの利用:20代では42.1%が古着のリサイクルを実践、46.0%がアウトレットを活用。

持続可能なファッションの実現を目指して、消費者庁・経済産業省・環境省の3省庁が「持続可能なファッション政策」を推進しています。本記事では、各省庁が行う具体的な取り組みと、私たちが日常でできるアクションについて詳しく解説します。


3省庁が推進する「持続可能なファッション政策」の役割分担

「持続可能なファッション政策」では、消費者庁、経済産業省、環境省がそれぞれの専門的な視点から役割を担っています。

  1. 消費者庁消費者教育と意識向上
    消費者庁は、消費者がサステナブルな選択をできるよう教育や啓発活動を行っています。消費者の行動が環境に与える影響を理解し、環境に優しい製品を選ぶ意識を高めることが目標です。消費者庁は、全国の学校での教育プログラムや地域でのワークショップを通じ、エコな生活を実現するための知識やリサイクル方法を広めています。
  2. 経済産業省リサイクル技術と循環型ビジネスの促進
    経済産業省は、ファッション業界のリサイクル技術の向上とビジネスモデルの構築を支援しています。たとえば、繊維廃棄物を化学的に分解し再利用する「ケミカルリサイクル」の技術開発や、企業がリサイクル素材を使用した製品を販売しやすくするための支援策が進められています。さらに、経済産業省は、消費者が古着をリサイクルしやすい仕組みを整備し、リユース市場の活性化を図っています。
  3. 環境省環境保護と政策の強化
    環境省は、ファッション業界の環境負荷を監視し、効果的な政策を実施しています。ファッション製品の製造過程で使用される化学物質やCO2排出量を減らすためのガイドラインを策定し、企業や消費者に環境に優しい選択を呼びかけています。さらに、環境省は廃棄物の回収率を向上させるための施策を打ち出し、自治体と連携して衣類リサイクルの促進にも取り組んでいます。

サステナブルファッションの未来に向けた3つの具体的施策

  1. サーキュラーエコノミーの推進
    使い捨てから循環型経済へとシフトするため、ファッション業界では製品の寿命を延ばし、廃棄を削減する取り組みが求められています。たとえば、衣類の設計段階からリサイクル可能な素材を使用し、使い終わった製品を再び資源として活用する「サーキュラーエコノミー」が推進されています。また、企業には、製品が分解しやすいデザインや素材を採用し、消費者がリサイクルしやすいように工夫することが求められています。
  2. 消費者の意識を変える教育キャンペーン
    消費者庁は、消費者の意識改革のため、教育キャンペーンを全国で展開しています。例えば、消費者庁の講座やオンラインキャンペーンでは、消費者が製品のエコラベルや環境認証を通じて、環境に配慮した製品を選べるよう支援しています。さらに、リサイクルやリユースの重要性を理解することで、消費者が持続可能な行動を取りやすくなっています。
  3. リサイクル・リユースのための体制整備
    リサイクルを促進するため、経済産業省と環境省は、全国に衣類の回収ボックスを設置する取り組みを進めています。これにより、消費者が不要な衣類を簡単にリサイクルできるようになり、リサイクル率の向上が期待されています。また、企業にはリサイクルしやすいデザインや素材を取り入れた製品づくりが推奨され、持続可能な社会を実現するための体制が整備されています。

消費者ができる具体的な5つのアクション

「持続可能なファッション政策」に基づき、消費者が日常生活でできる具体的なアクションを紹介します。

  1. エシカルで長持ちするアイテムを選ぶ 私たちができる第一歩は、流行に流されず、長く愛用できる品質の高いアイテムを選ぶことです。これにより、頻繁な買い替えが減り、環境への負担が軽減されます。たとえば、シンプルなデザインや耐久性のある素材を選び、修理可能な衣類を選ぶことで、ファッションのライフサイクルを延ばせます。
  2. サステナブルブランドやエシカルブランドを応援する 環境に配慮し、持続可能な素材を使用したエシカルブランドを積極的に選ぶことも重要です。多くのブランドがリサイクル素材や有機コットンを使用しており、消費者としてこれらのブランドを支持することで、サステナブルなファッションの普及を後押しできます。また、サステナブルブランドのSNSをフォローしたり、製品レビューでポジティブなフィードバックを残すことで、他の消費者にも環境に配慮した選択肢を広めることができます。
  3. 不要な衣類をリサイクルに出す 衣類を捨てるのではなく、リサイクルやリユースのルートを活用することが推奨されます。リサイクルボックスや地域の回収イベント、オンラインフリーマーケットなど、不要な衣類を活用できる場は数多くあります。また、定期的にクローゼットを見直し、着なくなったアイテムを他の人に譲るなど、衣類を再利用する文化を広める活動にも貢献できます。
  4. 衣類のメンテナンスを習慣にする 長く愛用するためには、衣類のメンテナンスが欠かせません。洗濯方法を見直し、漂白剤や乾燥機の過使用を避けることで、生地の劣化を防ぎ、衣類の寿命を延ばせます。また、破れやほつれを早めに修理することで、長く使えるようになり、買い替えの頻度を減らすことが可能です。消費者庁はこうしたメンテナンスの啓発活動も進めており、消費者に環境に配慮した消費の仕方を広めています。
  5. 自分の消費行動を見直し、必要なものだけを購入する 衝動買いや使い捨てを避けるため、購入前に「本当に必要か」を見直す習慣も重要です。必要最小限のアイテムを揃え、品質にこだわった製品を選ぶことで、サステナブルファッションへの貢献が可能です。また、「少ないもので豊かに暮らす」ミニマリスト的な考え方も、持続可能な生活を実現するための一つのアプローチです。

各省庁の具体的な取り組みとウェブサイト情報

「持続可能なファッション政策」の実現に向けて、消費者庁・経済産業省・環境省の3省庁がそれぞれの専門的な役割に基づき、具体的な取り組みを行っています。それぞれの省庁の活動内容と、それに関連する公式ウェブサイトを以下にまとめました。


1. 消費者庁の取り組み – 消費者教育と意識向上の推進

消費者庁は、消費者が自ら持続可能な選択を行えるよう、教育や啓発活動に力を入れています。特に、若年層へのサステナブルファッション教育や、エコロジー意識を高めるためのキャンペーンを展開しており、学校や地域での講座やワークショップを通じて、環境に配慮した消費行動を促進しています。

消費者庁の具体的な取り組み

  • サステナブル消費キャンペーン:エコラベルや認証マークを活用し、消費者が簡単にサステナブルな製品を選べるよう支援。
  • 若年層向けのワークショップ開催:学校や地域でサステナブルファッションの理解を深めるための講座や教育プログラムを実施。
  • 消費者教育ガイドラインの整備:持続可能な選択を支援するため、教育の基盤となるガイドラインを策定。

消費者庁の公式サイトでは、サステナブル消費に関する情報やキャンペーンについて最新の情報を提供しています。


2. 経済産業省の取り組み – リサイクル技術の発展とビジネスモデル構築の支援

経済産業省は、ファッション業界でのリサイクル技術の発展やサステナブルなビジネスモデルの構築を支援しています。特に、繊維のケミカルリサイクル技術の開発支援や、企業がリサイクル素材を活用しやすくするためのインセンティブ提供に注力しており、循環型ビジネスの普及を推進しています。

経済産業省の具体的な取り組み

  • ケミカルリサイクル技術の支援:廃棄された繊維を分解して再利用する化学技術を促進し、サステナブルな素材生産を実現。
  • リサイクル製品に対する補助金制度:企業がリサイクル素材を用いた製品を生産する際の経済的支援を行い、循環型ビジネスモデルを拡大。
  • 古着の回収とリユースの普及:古着の回収率向上を図るため、地域のリサイクルボックスの設置やリサイクル業者との連携を推進。

3. 環境省の取り組み – 環境負荷の低減と政策の実施

環境省は、ファッション業界の環境への影響を監視し、具体的な政策の実施に取り組んでいます。環境保護を目的とした規制やガイドラインの策定に加え、企業と自治体との連携を強化し、衣類廃棄物の削減とリサイクル率の向上を目指しています。また、業界に向けた環境負荷削減のガイドラインを発表し、具体的な目標設定を支援しています。

環境省の具体的な取り組み

  • 環境負荷削減ガイドラインの策定:ファッション製品の生産過程での化学物質の使用削減とCO2排出量の低減を促進。
  • 自治体との連携による回収システムの整備:全国の自治体と協力し、衣類廃棄物の回収システムを整備し、リサイクル率の向上を目指す。
  • 企業向け環境管理の支援:環境への配慮を強化するため、企業に対する環境負荷管理のための教育やガイドラインを提供。

環境省の公式サイトでは、ファッション業界を含むさまざまな分野での環境対策やガイドライン、教育資源を提供しています。


まとめ

消費者庁、経済産業省、環境省の3省庁が協力して推進する「持続可能なファッション政策」は、ファッション業界と消費者が協力し、持続可能な社会を築くための道筋を示しています。私たち一人ひとりがエシカルで持続可能な選択を日常生活に取り入れることで、より豊かな未来が期待できます。未来の地球のために、サステナブルな選択を始めましょう。

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この記事を書いた人

私たちeco living編集部は、脱炭素アドバイザー ベーシックの資格を保有した編集者が、持続可能な暮らしを提案し、環境に配慮したライフスタイルをサポートするために日々記事を発信しています。地球に優しい商品やサービスの紹介から、エコな生活のヒントまで、皆さまのより良い未来作りのお手伝いを目指しています。

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