持続可能な社会の実現を目指す国際目標、SDGs(持続可能な開発目標)。その中でも 「SDGs 11:住み続けられるまちづくりを」 は、都市や地域が人々の暮らしを支え、環境と調和する未来を目指す重要な目標です。
現代の都市化は、経済発展の一方で多くの課題をもたらしています。人口集中による住環境の悪化、交通渋滞や大気汚染の深刻化、自然災害に対する脆弱性など。SDGs 11は、これらの問題を解決し、すべての人々に安全で包容力のある持続可能なまちづくりを実現することを目指します。
この記事では、SDGs目標11の概要を解説しながら、日本と世界での成功事例を紹介。さらに、私たち一人ひとりができる取り組みを考えていきます。
SDGs目標11が掲げる具体的な内容とは?
SDGs 11は、都市や人間の住環境を中心に持続可能な発展を目指しています。その具体的なターゲット(小目標)を理解することで、課題と解決策を明確に見出すことができます。以下は主なターゲットです。
1. 安全で手頃な住宅と基本サービスの提供(ターゲット11.1)
2030年までに、すべての人が安全で手頃な住宅を手に入れられる社会を目指します。また、基本的なサービスやインフラの整備も含まれます。
- 世界中でスラム化が進み、約10億人が劣悪な住環境で生活。
- 日本でも若者や高齢者の住宅確保が困難になるケースが増加。
2. 安全で持続可能な移動手段の確保(ターゲット11.2)
公共交通機関を含む持続可能な移動手段を普及させることが求められます。
- 都市部での交通渋滞や排気ガスによる大気汚染。
- 地方での交通手段不足による高齢者の生活の困難化。
3. 災害に強い都市づくり(ターゲット11.5)
自然災害に対する都市や地域の耐性を高め、人命や財産の損失を防ぐことを目指します。
- 日本では地震や台風が頻発し、都市部での被害が深刻。
- 発展途上国では洪水や土砂災害への対策が不十分。
4. 文化遺産と自然遺産の保護(ターゲット11.4)
都市化の中で失われつつある歴史や自然を次世代に残すことも、SDGs 11の重要な目標です。
- 日本では伝統的な町並みが観光開発で損なわれるケースが増加。
- 世界では文化遺産が気候変動や開発によって破壊されつつあります。
具体的なターゲットとしては以下9つが掲げられています。
2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
日本の成功事例:SDGs 11の取り組み
京都市「景観政策」
京都市は、美しい町並みと歴史的建造物を保護するため、厳しい景観政策を実施しています。建物の高さや色、看板のデザインまで細かく規制し、観光地としての価値を保ちながら地域住民の生活環境も守っています。
- ポイント
- 観光開発と住民生活の調和を実現。
- 国際的にも評価される持続可能な都市計画。
横浜市「スマートシティプロジェクト」
横浜市では、エネルギーの効率化や再生可能エネルギーの活用を推進する「スマートシティプロジェクト」を実施。電力消費量を抑えるとともに、災害時には地域全体でエネルギーを分け合えるシステムを整備しています。
- ポイント
- 再生可能エネルギーの利用拡大。
- 災害時のエネルギー供給問題を解決。
富山市「コンパクトシティ構想」
富山市は、公共交通機関を充実させて地域をコンパクトにまとめる取り組みを進めています。特に高齢者や子育て世帯の移動負担を減らし、生活の質を向上させる政策が注目されています。
- ポイント
- 高齢化社会に対応した移動手段の確保。
- CO2排出量の削減にも成功。
世界の成功事例:SDGs 11が実現する未来
フィンランド・ヘルシンキの「ゼロカーボン都市計画」
フィンランドの首都ヘルシンキでは、2035年までにカーボンニュートラルを達成する計画が進行中です。エネルギー効率の良い公共交通システムや、都市全体でのグリーンエネルギー利用がその柱です。
- ポイント
- 地域住民が利用しやすい公共交通機関の充実。
- 持続可能なエネルギー利用の拡大。
コペンハーゲンの「自転車都市」
デンマークのコペンハーゲンでは、自転車を主要な交通手段とする取り組みが進んでいます。専用レーンや駐輪設備の整備によって、市民の約40%が通勤や通学に自転車を利用しています。
- ポイント
- 大気汚染の軽減と健康促進を両立。
- 都市部の交通渋滞を解消。
インドネシア・ジャカルタの「洪水対策プロジェクト」
ジャカルタでは、頻発する洪水に対応するため、大規模な排水システムや自然再生プロジェクトが進められています。また、沿岸部の住民を支援する取り組みも展開されています。
- ポイント
- 自然災害への耐性を向上。
- 環境と共生する都市計画を実現。
私たちにできること:住み続けられるまちづくりを支援するアクション
1. 公共交通を積極的に利用する
移動手段を公共交通に切り替えることで、交通渋滞の解消や大気汚染の削減に貢献できます。
2. 地域イベントに参加する
地元で行われるまちづくりや環境保全に関するイベントやワークショップに参加することで、地域社会に直接貢献できます。
3. 文化遺産の保護に関心を持つ
地域の文化遺産や自然遺産を守る活動に寄付したり、訪問時に適切なマナーを守ることで、遺産保護を支援できます。
まとめ|持続可能なまちづくりを目指して
SDGs目標11が掲げる「住み続けられるまちづくり」は、私たちの暮らしをより良くするだけでなく、未来の世代にとっても重要な課題です。個人の小さな行動が、持続可能な都市づくりの一端を担います。
一緒に、すべての人が住みやすい街を未来に残すための第一歩を踏み出しましょう!