なぜ食品ロスが生まれるのか?家庭と企業の主な原因とその解決策

もくじ

はじめに

「食品ロス」という言葉を耳にすることが増えてきましたが、実際にどれだけの食べ物が無駄になっているのか、そしてなぜそれが起きるのかを意識している人は少ないかもしれません。
私たちの日常生活の中で食品ロスが生まれる主な原因はどこにあるのか、そしてどのように解決できるのか。
今回は、買いすぎや消費期限への誤解、流通の問題といった根本的な原因を詳しく掘り下げ、エコなライフスタイルを目指すあなたに役立つ具体的な解決策をご紹介します。


食品ロスの現状

食品ロスの問題は、世界的に大きな課題となっています。日本だけでも年間約472万トンもの食べ物が廃棄されており、そのうち、一般家庭から出る量は約236万トンにも及びます。これは、1人当たりに換算すると、毎日おにぎり1個分に相当する量が無駄になっている計算です。家庭や企業でのロスの原因を理解することが、食品ロス削減の大きな一歩です。

企業(事業者)と家庭でそれぞれ発生の原因と対策が異なります。それぞれの原因と事例、その対策について解説していきます。

家庭で発生する食品ロスの原因TOP5

  1. 週末にまとめ買いしすぎて使い切れない
  2. 賞味期限・消費期限の勘違いによる廃棄
  3. 大量調理した料理が残ってしまう
  4. 冷蔵庫内で食品が埋もれて忘れられる
  5. 調味料や乾物の消費ペースを見誤って廃棄する

企業(事業者)で発生する食品ロスの原因TOP4

  1. 生産段階での規格外食品の廃棄
  2. 流通段階での管理ミスによる食品の廃棄
  3. 販売期限を過ぎた在庫の廃棄
  4. 店頭での展示中に傷んだ食品の廃棄

家庭で発生する食品ロスの原因TOP5(事例とその対策)

家庭での食品ロスは、意識していないところで毎日発生しています。特に、買いすぎや期限管理のミス、保存方法の誤りが原因となりやすく、これが私たちの生活の中で食品ロスを生む要因となっています。
以下に、具体的な事例とその対策を紹介します。

1. 週末にまとめ買いしすぎて使い切れない

多くの家庭で、週末にまとめて買い物をして必要な食材を揃える傾向がありますが、計画不足で買いすぎてしまうことが食品ロスにつながります。特に、生鮮食品は保存期間が短いため、使い切れずに廃棄されることがよくあります。

  • 事例
    平日は忙しくて料理をする時間がないため、週末にまとめて購入するものの、仕事の疲れで外食が増え、野菜や果物が冷蔵庫に残ったまま腐らせてしまう。
  • 対策
    買い物の前に冷蔵庫の中を確認し、今ある食材で作れるメニューを考えてから、必要な分だけ購入するようにしましょう。また、使い切れなかった野菜は冷凍保存するなど、保存方法も工夫すると良いです。

2. 賞味期限・消費期限の勘違いによる廃棄

家庭で多くの人が、賞味期限と消費期限の違いを混同してしまうことがよくあります。賞味期限は「美味しく食べられる期間」、消費期限は「安全に食べられる期間」を指しており、賞味期限が過ぎても食べられる食品が多いのです。

  • 事例
    賞味期限が切れた食品を捨ててしまう、冷蔵庫の奥に押し込んだまま期限切れに気づかないで廃棄してしまう。
  • 対策
    賞味期限が近い食品は冷蔵庫の前に置き、意識的に消費するようにすると良いです。また、「見た目」「香り」「味」を確認し、問題がなければ期限を過ぎても無駄にせず食べるようにしましょう。

3. 大量調理した料理が残ってしまう

ホームパーティーや休日に家族分の食事を多めに作ると、結果として余ってしまうことがあり、これが食品ロスに直結することがあります。特に、カレーやシチューなど大量調理が前提のメニューは残りやすいです。

  • 事例
    大鍋で作ったカレーが食べきれずに数日放置され、最後は傷んで廃棄することになる。
  • 対策
    余った料理は冷凍保存して、後日の食事に使いましょう。また、量を適量に調整したり、余った料理はアレンジして別のメニューにするなど、再利用の工夫をすることも有効です。

4. 冷蔵庫内で食品が埋もれて忘れられる

冷蔵庫内で食材が埋もれてしまい、使おうと思っていた食品が賞味期限を迎えてしまうのもよくある食品ロスの原因です。特に、奥に入っている調味料や冷蔵品は忘れられがちです。

  • 事例
    野菜室に入れたレタスやきゅうりが他の食品に隠れてしまい、気づいた頃には使えない状態になっている。
  • 対策
    冷蔵庫の中身はこまめにチェックし、購入した食材は手前に並べるようにしましょう。また、期限が近いものは「使い切りデー」を設けて、週末にまとめて消費するのも効果的です。

5. 調味料や乾物の消費ペースを見誤って廃棄する

調味料や乾物は日持ちするため、つい買いすぎたり、使い切る前に新しいものを購入してしまうことがあります。しかし、使う頻度が少ないため、気づかないうちに賞味期限を過ぎ、廃棄することになりがちです。

  • 事例
    大きなサイズの調味料を買ったものの、頻繁に使うことがなく、気づけば長期間放置されていた。
  • 対策
    調味料は、使用頻度に合わせた小さなサイズを選ぶようにし、古いものから使い切るように心がけましょう。また、保存しやすい瓶や容器に移し替えることで、管理しやすくなります。

企業(事業者)で発生する食品ロスの原因TOP4(事例とその対策)

食品ロスは、私たち消費者の行動だけでなく、企業の流通過程でも多く発生しています。生産から消費者に届くまでの様々な工程で、思わぬ理由から食品が廃棄されることが少なくありません。ここでは、実際に流通過程で発生する食品ロスの事例をいくつか紹介し、企業側での取り組みもご紹介します。

1. 生産段階での規格外食品の廃棄

企業が販売するためには、規格に沿った食品のみが市場に出回りますが、形状や大きさが基準に満たない「規格外食品」は販売されず、廃棄されることが多いです。これは、見た目が基準に合わないだけで品質に問題のない食べ物が大量に捨てられる原因の一つです。

  • 事例
    大手スーパーでは、野菜や果物に対して「形や色が規格外である」と判断され、販売に至らず廃棄されることがあります。例えば、曲がったキュウリや傷のついたリンゴなどが、消費者の「新鮮で見た目が美しい商品を買いたい」という意識から店頭に並ぶことが少なく、廃棄対象となってしまいます。
  • 対策
    近年は「もったいない」意識の高まりから、こうした規格外の食品を「訳あり商品」として販売する動きも見られます。企業によっては、規格外品を加工品として販売することで廃棄を減らしています。

2. 流通段階での管理ミスによる食品の廃棄

食品は、生産地から倉庫、販売店へと複数の場所を経由して消費者に届きますが、この過程で温度管理や取り扱いミスが原因で食品が劣化し、廃棄されることがあります。特に冷凍食品や生鮮食品は温度管理が重要で、少しの温度変化でも品質が落ちてしまうリスクがあります。

  • 事例
    ある物流企業では、トラックでの温度管理が徹底されず、一部の商品が破損や劣化により販売できなくなるケースがありました。特に夏場の移動では外気温の影響を受けやすく、冷蔵や冷凍の不備から発生する食品ロスが問題になっています。
  • 対策
    こうした問題に対応するため、物流業界では温度センサーを導入し、リアルタイムで温度管理が可能なトラックが普及しつつあります。また、AIによる物流計画の最適化で、輸送時間の短縮や配送の精度向上を図ることで食品の劣化を防ぐ取り組みも進んでいます。

3. 販売期限を過ぎた在庫の廃棄

小売店や飲食店では、消費者に新鮮な商品を提供するため、販売期限(店頭での販売可能期間)を設定しています。この期限を過ぎた商品は、まだ賞味期限内であっても廃棄されることが多く、在庫管理の課題が食品ロスの要因となっています。

  • 事例
    コンビニエンスストアなどでは、頻繁に在庫入れ替えが行われており、販売期限を過ぎた商品は即座に廃棄されることがあります。消費者が「新鮮さ」に価値を置くため、消費期限に余裕があっても販売から外され、廃棄対象となることが多いです。
  • 対策
    一部の大手スーパーでは、販売期限が近い商品を値引きして早期販売を促進することで、無駄な廃棄を減らす取り組みを行っています。また、廃棄が発生した際には、フードバンクや寄付先に提供する仕組みも導入されています。

4. 店頭での展示中に傷んだ食品の廃棄

店頭で食品を販売する際、消費者が手に取りやすいようにディスプレイされますが、何度も手に取られた商品は劣化や傷がつきやすく、結果として廃棄されることがあります。特に果物や野菜などの生鮮食品は取り扱いが難しく、消費者が触れることで痛みが発生しやすいです。

  • 事例
    大手スーパーマーケットでは、果物を陳列する際、消費者が触れることで表面に傷がつき、見た目の品質が落ちて販売不可になるケースが報告されています。また、特売日などの人の多い日は廃棄の割合が増加する傾向にあります。
  • 対策
    こうした問題に対して、売り場での食品の取り扱い方を工夫したり、店舗のスタッフがこまめにチェックして品質を維持する取り組みが行われています。また、痛みやすい果物をパック詰めすることで、触れることによる劣化を防ぐ工夫もされています。

企業の流通過程での食品ロス削減に向けて

企業の流通過程で発生する食品ロスは、私たちの知らないところで発生していますが、こうした事例を通じて消費者としてできることも増えています。例えば、訳あり品を選んで購入する、店頭で商品を慎重に扱うなどの行動も、企業の努力と相まって食品ロス削減につながります。

食品ロスの問題に向き合うことで、企業と消費者が協力して持続可能な未来を築く一歩を共に踏み出せるでしょう。

私達にできる食品ロスの対策

いざ、食品ロスを減らそうとしても、難しいアクションを行おうとすると長続きしません。
今回は取り組みやすい3つのアクションを紹介していますが、無理のない範囲で少しづつ取り組むことで確実に食品ロスに繋がっていきます。

1. フードシェアリングサービスの利用

フードシェアリングは、余った食材や食べきれない食品を他の人に分けるサービスです。これにより、食べ物を無駄にせず、必要な人に届けることができます。日本でも「TABETE」などのアプリが人気です。

2. フードバンクの活用

フードバンクは、企業や家庭から寄付された食品を、食べ物を必要としている人々や施設に提供する活動です。食べ物を無駄にせず、社会貢献にもつながる方法として注目されています。

3. スマートフォンアプリでの食品管理

消費期限や賞味期限を管理できるアプリを使うと、食品の使い忘れが減り、結果的に食品ロス削減につながります。アプリでは、期限が近い食品をリマインドする機能もあり、手軽に管理できます。

まとめ|私たちができる小さな一歩が、未来の大きな変化に

食品ロスをなくすためには、日常生活でのちょっとした意識や行動が鍵となります。買いすぎや賞味期限への理解、そしてフードシェアリングやフードバンクなどの方法を活用することで、私たちの小さな一歩が持続可能な未来に繋がるのです。まずはできることから始めてみませんか?

こちらの記事もおすすめ

この記事を書いた人

私たちeco living編集部は、脱炭素アドバイザー ベーシックの資格を保有した編集者が、持続可能な暮らしを提案し、環境に配慮したライフスタイルをサポートするために日々記事を発信しています。地球に優しい商品やサービスの紹介から、エコな生活のヒントまで、皆さまのより良い未来作りのお手伝いを目指しています。

もくじ