1. 日本の食品ロスの現状
食品ロスは、日本でも深刻な社会問題となっています。環境省のデータによると、日本では2021年度で約472万トンの食品が廃棄されているとされており、その中には、まだ食べられる食品も多く含まれています。
廃棄量の内訳は、家庭からのロスが約236万トン、企業や外食産業からのロスが約236万トンとなっています。これにより、日本国内での食品ロスの総量は他国と比較しても非常に高いレベルにあります。
特に、日本の食料自給率は約38%と低い状況にあるため、大量の食品が輸入され、また同時に大量の食品が廃棄されているという、矛盾した構図が問題視されています。
こうした食品ロスは、経済的な損失だけでなく、地球環境への悪影響を引き起こす要因にもなります。特に、廃棄された食品が分解される過程で排出されるメタンガスは、温室効果ガスとして地球温暖化を加速させる一因となります。
国内の廃棄量の詳細
農林水産省のデータによると、国民一人当たり年間約45kgの食品が無駄にされており、わかりやすく表すと、1日辺り「約124g = お茶碗一杯のご飯」の食品ロスが発生しており、年間にすると「約45kg = 年間1人当たりのお米の消費量(約53kg)に近い量」の食品ロスが発生していると言われています。
2. 食品ロスが発生する主な場所
日本国内で食品ロスが発生する場所は「家庭」「企業」「外食産業」の3つに大別されます。それぞれどれだけの食品が無駄にされているかを見ていきましょう。
家庭で発生する食品ロス
家庭で発生する食品ロスは、全体の約半数を占めます。
調理後に余ってしまった食材や、消費期限が切れてしまった食品が、その主な原因です。
多くの家庭では、冷蔵庫の中にある食材をきちんと管理しきれず、結果として賞味期限が過ぎてしまったり、調理しても食べきれないことが少なくありません。これを防ぐためには、購入前に冷蔵庫の中身を確認するなど、計画的な買い物が重要です。
また、賞味期限と消費期限の違いについての理解不足も、食品ロスを助長しています。
賞味期限は「美味しく食べられる期間」であり、多少過ぎても問題ない場合が多いのに対し、消費期限は「安全に食べられる期限」を意味します。
多くの消費者は、この2つを混同し、賞味期限が過ぎた段階で食品を無駄に捨ててしまうことがよくあります。
企業における食品ロス
企業から発生する食品ロスは、全体の約50%を占めます。特に食品製造業や小売業、外食産業で多くの食品が廃棄されています。製造過程では、規格外の商品や生産過剰による売れ残りが主なロスの原因です。また、小売業においては、販売期限を過ぎた商品の廃棄が大きな問題となっており、コンビニやスーパーでは賞味期限切れの前に商品を捨てることが一般的です。
こうした企業によるロスを減らすための取り組みとして、フードバンクへの寄付や、規格外商品を安価で販売する取り組みが進んでいます。これらの活動により、まだ食べられる食品が無駄にされず、有効活用される動きが広まりつつあります。
外食産業における食品ロス
外食産業では、食べ残しや過剰な調理による廃棄が頻繁に発生しています。バイキング形式のレストランや宴会では、過剰に料理を提供することが常態化しており、消費者が食べきれない量の料理が無駄になってしまいます。環境省のデータによると、外食産業での食品廃棄量は年間約60万トンに達します。
一部の飲食店では、少量メニューの提供や、余った食品を持ち帰る「ドギーバッグ」の推奨など、食品ロスを削減するための工夫が進められています。
3. 廃棄食品の種類と原因
廃棄される食品は野菜、果物、肉、魚、パン、乳製品、加工食品など多岐にわたります。主な原因には以下があげられます。
賞味期限・消費期限切れ
食品が賞味期限や消費期限切れで廃棄されるのは、家庭や小売業でよく見られる現象です。賞味期限が切れた商品はまだ食べられるにもかかわらず、消費者の誤解から廃棄されてしまうことが多いです。消費期限が切れると安全性が担保されなくなるため、より深刻な問題として企業や消費者の間で注目されています。
- 賞味期限切れ = まだ食べられる
- 消費期限切れ = 安全性が担保されないので食べられない
過剰購入と保存不足
消費者が必要以上に食品を購入し、食べきれずに捨ててしまうケースも多くあります。特に特売品やまとめ買いの習慣が、結果的に無駄な食品を生んでしまいます。さらに、適切な保存方法が守られていないために、野菜や果物が腐敗し、廃棄されるケースもあります。
4. 食品ロス削減に向けた取り組み
食品ロスを削減するため、さまざまな取り組みが進行しています。政府、企業、そして消費者が一体となって、この問題に取り組むことが必要です。
政府の施策
政府は「食品ロス削減推進法」を施行し、国民全体に食品廃棄を減らす意識を高める活動を展開しています。さらに、地方自治体や企業と連携し、食品ロス削減キャンペーンを実施しています。これらの取り組みにより、徐々に国民の意識も変わりつつあります。
企業の取り組み
企業では、フードバンクへの寄付や、規格外食品の活用などが進められています。飲食店でも、少量メニューや持ち帰りサービスなど、消費者が食品ロスを防ぐための工夫が増えています。
5. 日本国内の食品ロスに対する認知度と対応状況
日本国内での食品ロスに対する認識は年々高まっています。内閣府の調査によると、2021年時点で**約85%の国民が「食品ロスは深刻な問題である」**と答えています。しかし、**実際に行動に移しているのは約50%**に留まっています。多くの人が問題を認識しているものの、具体的な対策を実践できていないのが現状です。
家庭での対応
家庭では、食品ロス削減のために、買いすぎないように意識することや、冷蔵庫内の食材を管理する工夫が進められています。しかし、特に共働き世帯や一人暮らし世帯では、忙しい日常の中で計画的な買い物や調理が難しく、廃棄量が多くなる傾向があります。
外食産業での対応
一部の外食産業では、フードロス削減メニューの開発や、残った食品を持ち帰る「ドギーバッグ」運動が広がっています。これにより、消費者が無駄を減らす行動を取りやすくする環境が整えられています。
まとめ
日本の食品ロスは毎年約472万トンにも及び、家庭、企業、外食産業の各セクターで廃棄が発生しています。家庭では賞味期限切れや食べ残し、企業や外食産業では過剰生産や食べ残しが主な原因です。食品ロスは経済的な損失だけでなく、環境負荷も大きいため、私たち一人ひとりが日常生活で意識することが重要です。
計画的な買い物や適切な保存方法の実践により、家庭での食品ロスは確実に減らせます。また、企業や外食産業での取り組みも進んでおり、フードバンクへの寄付や少量メニューの提供など、消費者と企業が連携した取り組みが広がりつつあります。
食品ロスの削減は、地球環境保護に直結する行動です。できることから始め、持続可能な社会づくりに貢献していきましょう。