1. 日本における食品ロスの現状と課題
日本では毎年約500万トンもの食品が廃棄されており、その内訳は家庭が約半分を占め、外食産業、食品製造業もかなりの割合を占めています。
廃棄される食品の多くはまだ食べられる状態であり、食品ロスは経済的損失や環境問題とも深く関連しています。家庭での意識改革だけでなく、企業や自治体での廃棄削減努力を強化することにあります。
日本が事業系食品ロスの削減目標としている2030年の食品ロスを273万t(2000年と比べて半減する目標)を達成するためには、日本における食品ロス削減は、政府、企業、自治体が連携して推進することが重要なポイントとなります。
2. 食品ロス削減推進法とは?その背景と具体的な取り組み
食品ロス削減推進法は2019年に施行され、日本全体での食品ロス削減を目指す法的な枠組みです。この法律は、政府・自治体・企業が具体的な削減目標を立て、定期的な進捗確認と報告を義務づけています。法律施行後、政府は「食品ロス削減の基本方針」を打ち出し、次のような取り組みを進めています
- ①家庭向けの啓発活動
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食品ロス削減の重要性を伝えるために、テレビCMやポスターなどのメディアを活用。啓発冊子を学校や公共施設で配布し、特に子供たちに対する教育も強化しています。
- ②ガイドライン策定
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企業や自治体向けに、食品ロス削減における具体的な指針とガイドラインを提供し、実施を支援しています。
- ③データ管理の向上
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廃棄される食品の量や原因について、データ管理を徹底することで、削減効果を数値化しやすくしています。
3. 日本政府による食品ロス削減のための対策と成果
政府主導で行われている食品ロス削減の代表的な対策には、「3010運動」があります。
3010運動
食事開始後30分間と、最後の10分前には自分の席で食べることに集中して、食べ残しを減らすことを目標とする運動です。この運動は2011年に長野県松本市で始まり、全国に広がりました。特に、結婚式場やホテルの宴会で取り入れられています。
賞味期限の二段階表示
これまで食品の廃棄が多く発生していた原因の一つに、消費者が賞味期限を過剰に気にする傾向がありました。政府は「消費期限」と「賞味期限」の二段階表示を推奨し、食品が期限内に消費されやすくなるよう改善しました。これにより、消費者が食品を長く保存できるようになり、廃棄量が減少しています。
4. 企業が取り組む食品ロス削減活動の具体例と成果
企業もまた、独自の工夫で食品ロス削減を積極的に推進しています。具体的な事例とその成果を紹介します。
イオンの食品ロス削減の取り組み事例
「幸せの黄色いレシートキャンペーン」では、買い物後にレシートを寄付ボックスに投入すると、集まった金額の一部が地域のフードバンクなどに寄付されます。
これにより、地域住民も一緒に食品ロス削減のための資金支援に参加でき、持続的な支援の仕組みができています。また、食品廃棄を減らすため、賞味期限が迫った商品に割引シールを貼り、売り場で目立つよう配置。これにより、年間約3千トンの食品が無駄なく消費されています。
詳細はイオンの公式サイトでご確認いただけます。
日本マクドナルドの食品ロス削減の取り組み事例
食品ロス削減の取り組みとして「メイド・フォー・ユー(Made For You)」システムを導入し、食品廃棄の大幅な削減に成功しています。これは、注文後に調理するオーダーメイド方式で、調理後の廃棄が必要になる食品を削減。導入前と比較して、完成品の廃棄を約51.5%減少させています。
詳細はマクドナルドの公式サイトでご確認いただけます。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンの食品ロス削減の取り組み事例
コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、食品ロス削減の一環として「フードロス対策自販機」を設置し、賞味期限が近い製品を割引価格で提供する取り組みを行っています。これにより、消費者がフードロスについて考えるきっかけを提供し、廃棄を抑制しています。この自販機は茨城県行方市や神奈川県相模原市などの自治体と協力して設置され、地域のSDGs目標達成にも寄与しています。
詳細はコカ・コーラ ボトラーズジャパンの公式サイトでご確認いただけます。
5. フードバンクの役割と実績、国内での広がり
フードバンクは、まだ食べられる食品を必要とする人々に提供する活動です。日本では「セカンドハーベストジャパン」や「フードバンク山口」などが有名で、全国各地で食品の寄付と配布を行っています。
セカンドハーベストジャパン
大手食品メーカーからの寄付や、一般家庭からの食品提供を受け付けており、2021年には年間約20万トンの食材を配布。この取り組みは、食品ロス削減と福祉支援の二重の効果をもたらし、食品ロス削減に大きく貢献しています。
地域密着型のフードバンク活動
地域ごとに設けられた「食品バンクステーション」では、地元住民が家庭で余った食品を寄付できる仕組みが整備されており、地域住民の参加により持続的な活動が可能になっています。
6. 各地の自治体による食品ロス削減への取り組みと成果
地方自治体も食品ロス削減に向けてユニークな取り組みを展開しています。具体的な事例を2つ紹介します。
神奈川県の「フードドライブ活動」
神奈川県では、家庭や企業から提供された食品を福祉団体やフードバンクに寄付する「フードドライブ活動」を積極的に推進しています。この活動は県庁を含む地域の公共施設で広く展開され、特に10月の食品ロス削減月間には多くの拠点でフードドライブが行われています。
名古屋市の「食べ残しゼロ協力店」キャンペーン
この取り組みは、名古屋市が市内の飲食店や宿泊施設と連携して「食べ残しゼロ協力店」を登録し、来店客に食品ロス削減を促すものです。協力店舗では「適量の注文をお願いする」や「持ち帰りの推奨」などを行い、食べ残しを減らすための対策が実施されています。協力店のリストは名古屋市の専用ウェブサイト「食べ残しゼロ協力店マップ」で公開されており、利用者が食品ロス削減を意識して店舗を選べるようになっています。
名古屋にお住いの方はこちらのページから店舗が検索できます。
7. 私たちが日常でできる食品ロス削減アイデア
個人でできる対策として、以下の方法が挙げられます。
- 買い物前のチェック:家庭にある食材を確認することで、不必要な買い物を控えられます。
- 献立の計画:1週間分の献立を事前に計画し、食材を使い切ることが無駄を減らします。
- 保存方法の工夫:冷蔵庫内の食品の保管場所を定期的に見直し、鮮度を保つことで廃棄を防ぐことが可能です。
こちらの記事で家庭でできる食品ロス対策を詳しく紹介しています。
8. まとめ
事業系の食品ロスは冒頭で説明した通りですが。日本全体でのの食品ロス削減は、政府、企業、自治体、そして消費者が協力して取り組むことで、少しずつ成果を上げています。2021年の総食品ロスは約500万トンから若干減少していますが、持続的な努力が今後も必要です。私たち一人ひとりが食品を大切に扱う意識を持つことで、より持続可能な社会への道を築くことができます。