1. はじめに:なぜ水とトイレの問題が重要なのか?

水は、生命を維持するために不可欠な資源であり、適切な上下水道の整備は公衆衛生や都市の持続可能性に直結します。SDGs目標6では、すべての人が安全で清潔な水とトイレを利用できることを目指していますが、日本国内においても水資源の管理や災害時の水インフラ整備に課題が残されています。
日本の現状
- 日本は水資源が豊富な国とされているが、地域によっては慢性的な水不足や水質の悪化が発生。
- 高度経済成長期に整備された上下水道の老朽化が進んでおり、更新や維持管理が大きな課題に。
- 地震や台風などの自然災害時に水供給が途絶えるリスクがあり、災害時の上下水道確保が重要視されている。
本記事では、日本国内における水資源管理の課題や、災害時の上下水道インフラの現状をデータを交えながら解説し、行政や自治体の取り組みを紹介します。
2. 日本の水資源の現状と課題

① 水資源は本当に豊富?
日本は世界的に見ても降水量が多く、一見すると水資源に恵まれた国のように思われがちです。しかし、実際には水資源管理にいくつかの課題を抱えています。
降水量と水利用のギャップ
- 日本の年間降水量は約1,700mmで世界平均(約800mm)の2倍以上だが、国民1人当たりの利用可能な水資源量は世界平均の1/3程度しかない(国土交通省)。
- 水の約70%は農業用水に使用され、家庭や工業用に使える水の割合は限られている。
水ストレス地域の存在
- 東京や大阪などの都市部では、降水量が少なく、水源を他地域に依存する形になっており、水不足のリスクが高い。
- 高知県や富山県などでは年間降水量が多い一方、貯水インフラが未整備のため、大量の雨水がそのまま海へ流れてしまう。
② 上下水道の老朽化と維持管理の問題
日本の上下水道インフラの多くは高度経済成長期に整備されたものが多く、現在、設備の老朽化が深刻な問題となっています。
- 全国の水道管の約30%が耐用年数(40年)を超えている(厚生労働省)。
- 老朽化した水道管が原因で、年間約2億立方メートルもの水が漏水(東京都水道局)。
- 施設の更新費用が膨大で、自治体の財政負担が大きい。
③ 災害時の水供給リスク
日本は地震や台風などの自然災害が頻発する国であり、災害時の水確保が課題になっています。
- 2011年の東日本大震災では、全国で200万世帯以上が断水し、復旧までに数週間を要した。
- 熊本地震(2016年)では、断水した世帯が20万以上にのぼり、給水車による対応が限界に達した。
- 台風や豪雨による浸水被害で、上下水道施設が被災し、トイレや生活用水の確保が困難になるケースが増えている。
3. 行政や自治体の取り組みと進捗状況

① 上下水道の老朽化対策
- 厚生労働省は「水道ビジョン」を策定し、水道管の更新計画を推進。
- 自治体ごとに「水道広域化」を進め、維持管理コストの削減を目指す(例:東京都と千葉県の水道事業の連携)。
② 災害時の水供給対策
- 全国の自治体が防災井戸の設置を進め、災害時の水源確保を強化。
- 簡易浄水装置を自治体に配備し、災害時の飲料水供給を強化(神奈川県ではすでに導入)。
③ 水資源の持続可能な管理
- 企業と連携し、節水技術の導入を推進(トヨタやパナソニックなどが工場の水リサイクル技術を開発)。
- 再生水(下水処理水)を都市部での生活用水に活用する取り組みが進行(東京都の「水の再利用プロジェクト」)。
4. 私たちができる具体的なアクション

水資源を持続可能に利用し、災害時のリスクを減らすために、個人でもできることがあります。
① 節水を意識する
- 歯磨き時に水を出しっぱなしにしない(1回の歯磨きで約6Lの節水)。
- 風呂の残り湯を洗濯や掃除に活用する(年間で約20,000Lの節水)。
② 災害時に備える
- 家庭で飲料水を**1人あたり1日3L×3日分(計9L)**備蓄する。
- 簡易浄水器やポータブルトイレを用意し、災害時に対応できるようにする。
③ 水環境を守る行動をとる
- 下水に油や異物を流さないことで、水質汚染を防ぐ。
- 地域の水源(川や湖)の清掃活動に参加し、水質改善に貢献する。
5. まとめ:安全な水とトイレを守るために
日本は一見、水資源に恵まれているように思えますが、**水の利用可能量には限りがあり、地域による格差や水道インフラの老朽化が課題となっています。**さらに、災害時には水の供給が途絶えるリスクが高く、事前の備えが不可欠です。
行政や企業の取り組みが進む中、私たち一人ひとりも節水や備蓄を意識し、安全な水とトイレを未来に引き継ぐための行動を始めてみましょう!
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