【はじめに】質の高い教育が求められる背景
現代社会において、教育は持続可能な未来を作るための土台となるものです。しかし世界には、教育を受けられない子どもが多く存在します。国連のデータによれば、初等教育を修了できない子どもたちは約5700万人にのぼり、その多くが発展途上国に集中しています。また、教育格差は性別や所得、地域によっても大きく異なります。
日本国内でも経済的要因で進学を諦めざるを得ない子どもが存在するなど、教育を巡る課題は決して他人事ではありません。
この記事では、SDGs目標4を深掘りしながら、世界と日本の取り組み事例、そして私たちにできることを考えていきます。
SDGs目標4の具体的なゴールとは?
SDGs目標4では、「2030年までにすべての人が質の高い教育を受けられるようにする」という目標を掲げています。この目標を達成するために、次の具体的なターゲット(達成目標)が設定されています。
- すべての子どもが初等教育と中等教育を修了すること
- 男女平等に職業訓練や高等教育を受けられる機会を提供すること
- 識字率と計算能力の向上
- 安全で包摂的な学習環境の確保
- 教師の質向上と教育機会の拡大
それぞれを紹介すると以下が目標として掲げられています。
2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ有効な学習成果をもたらす、自由かつ公平で質の高い初等教育および中等教育を修了できるようにする。
2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達支援、ケアおよび就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
2030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育および大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事および起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民および脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
2030年までに、すべての若者および成人の大多数(男女ともに)が、読み書き能力および基本的計算能力を身に付けられるようにする。
2030年までに、持続可能な開発と持続可能なライフスタイル、人権、ジェンダー平等、平和と非暴力の文化、グローバル市民および文化的多様性と文化が持続可能な開発にもたらす貢献の理解などの教育を通じて、すべての学習者が持続可能な開発を推進するための知識とスキルを習得できるようにする。
子ども、障害およびジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国およびその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国における教員養成のための国際協力などを通じて、資格を持つ教員の数を大幅に増加させる。
(出典:グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)
発展途上国における教育支援活動
教育格差が顕著な地域では、課題解決のための取り組みが数多く進められています。
1. 学校建設プロジェクト
多くの地域で、教育を受けるための物理的な施設が不足しています。たとえば、アフリカのウガンダでは、地元の素材を活用して低コストで学校を建設するプロジェクトが進行中です。この取り組みは、地域経済の活性化にもつながり、持続可能な支援のモデルとなっています。
2. 教育へのアクセス拡大: 女の子の教育
発展途上国では、特に女の子が教育を受けられない状況が深刻です。インドでは、NGOの支援により女子生徒専用の奨学金制度が設立され、10万人以上の女の子が学校に通えるようになりました。こうした取り組みは、将来的に女性の社会進出や経済的自立にも寄与しています。
3. テクノロジーを活用した教育支援
デジタル技術が教育格差解消のカギとなっています。たとえば、インドネシアではモバイルラーニングアプリが普及し、インターネット環境が整っていない地域の子どもたちにも教育機会を提供しています。アプリには現地語の教材が含まれ、識字率向上に大きく貢献しています。
日本国内における教育格差解消の取り組み
日本でも、子どもの貧困や教育格差が深刻な問題となっています。以下に具体例を挙げます。
1. 子ども食堂と学習支援
「子ども食堂」は、経済的に困難な家庭の子どもたちに無料または低価格で食事を提供する活動ですが、学習支援を組み合わせた取り組みが増えています。東京都内のNPO団体では、子どもたちが学校の宿題や進路相談を受けられる学びの場を提供しています。
2. 公教育のICT化: GIGAスクール構想
2020年から推進されているGIGAスクール構想では、小中学生全員にタブレット端末を配布し、オンライン教育環境を整備しています。これにより、地域間の教育格差を減らすとともに、個別学習や双方向型授業を可能にしています。
3. 学校外の支援プログラム
非営利団体「キッズドア」などが行う無料の学習塾は、経済的理由で塾に通えない子どもたちに高品質な教育を提供しています。特に受験期におけるサポートが評価され、多くの学生が進学に成功しています。
教育格差解消のために私たちができること
では、個人として教育支援にどのように関わることができるのでしょうか?
1. 資金援助を通じた参加
教育支援団体への募金や寄付は、最も身近にできる行動です。「ユニセフ」や「セーブ・ザ・チルドレン」などの団体に寄付をすることで、現地の教育改善に役立てられます。
2. 知識やスキルの提供
社会人が自分のスキルを活かして、オンライン教育ボランティアに参加する事例も増えています。英語やプログラミングを教える取り組みは、将来のキャリア形成に大きな影響を与えます。
3. フェアトレード商品の購入
教育支援に直接関連するわけではありませんが、フェアトレード商品を購入することで、発展途上国のコミュニティ支援につながり、間接的に教育環境の整備をサポートできます。
4. SNSでの情報発信
教育支援の重要性や、自分が参加している活動についてSNSで発信することで、より多くの人に関心を持ってもらうことができます。
教育格差の現状をデータから知る
- 世界で初等教育を受けられない子ども:約5700万人(出典: UNESCO)
- 発展途上国での女の子の識字率:男性の約60%にとどまる(出典: World Bank)
- 日本の子どもの貧困率:約13.5%、およそ260万人(出典: 厚生労働省)
こうしたデータは、教育格差の解消がどれほど重要かを示しています。
まとめ
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに!」を実現するためには、国際社会だけでなく、私たち一人ひとりの行動が必要です。教育を受けることができる環境を当たり前とするのではなく、教育の重要性を再認識し、小さなアクションを起こすことから始めましょう。