持続可能な未来を実現するためのSDGs(持続可能な開発目標)の中で、目標5「ジェンダー平等」は重要な柱の一つです。
性別に関係なく、すべての人が平等に機会を得られる社会を目指すことは、他の目標(教育、経済、気候変動など)の達成にも大きな影響を与えます。
しかし、現実には多くの課題が残されており、ジェンダー格差は未だ多くの国で顕著です。本記事では、SDGs目標5のターゲットとその具体例、課題を詳しく解説し、日本と世界の取り組み事例を紹介します。
SDGs目標5とは?具体的なターゲットの解説
SDGs目標5は、単に「女性と男性の平等」を目指すものではなく、性別を問わずすべての人が公平な権利を持つ社会を作ることを目的としています。
SDGs目標5が掲げるターゲットをまとめると以下の通りとなります。
- すべての形態の差別や暴力をなくし、ジェンダー平等を実現することが目標
- 女性や女児が、教育や経済活動、政治などあらゆる分野で平等に活躍できる社会を目指す
- 固定観念を打破し、家事・育児の責任を男女で平等に分担する社会をつくる
- 文化的・伝統的な慣習による権利侵害をなくすこと
具体的なそれぞれのターゲット(達成目標)は、以下の内容が設定されています。
あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
人身売買や性的、その他の種類の搾取など、全ての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、並びにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。
女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、並びに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
ジェンダー平等の促進、並びに全ての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。
ジェンダー平等がもたらす社会的・経済的効果
ジェンダー平等は道徳的な義務であるだけでなく、経済や社会に多大なメリットをもたらします。
女性の参加が経済に与える影響
ダイバーシティ戦略家のTorin Ellis氏の報告によると、ジェンダー平等が達成されることで、アメリカの経済が16兆ドル(約1744兆円)拡大する可能性がある事を示しました。
これは、女性が労働市場で平等に参加することで新たに生まれる経済活動の価値を指します。
ジェンダー不平等がもたらすリスク
一方で、ジェンダー格差を放置すると、労働力の減少や経済停滞のリスクが高まります。
例えば、日本では女性の労働力参加率は増加傾向にありますが、正規雇用では依然として男女の格差が大きいことが課題です。このままでは多様な視点を活かした組織の成長が阻害される懸念があります。
ジェンダー平等を阻む現実の課題
1. 法的・制度的な障壁
多くの国ではジェンダー平等に向けた政策が導入されているものの、実施が進まないケースが目立ちます。たとえば、日本では「男女共同参画基本法」がありますが、ジェンダー平等を進めるための具体的な数値目標が低く設定されています。
2. 社会的偏見と固定観念
「女性は家庭を守るべき」「男性が主に稼ぐべき」といった固定観念が、ジェンダー平等の進展を妨げています。この意識の変革には、教育やメディアの役割が重要です。
3. 経済格差の影響
女性は男性よりも低賃金で働くことが多く、昇進の機会も限られています。ILO(国際労働機関)のデータでは、世界の男女間の賃金格差は約20%に上ります。
世界の取り組み事例を深掘り
1. スウェーデン:仕事と育児の両立を可能にする「パパクオータ制度」
スウェーデンでは育児休暇の一部を父親専用として割り当てる「パパクオータ制度」を導入。
「パパクオータ制度」とは、子どもが8歳になるまでに両親で合わせて480日もの育休を取れるが、その内の90日間は父親に割り当てられています。
また、同時に育休期間中の390日は賃金の8割を保障、残りの90日間は1日辺り約1,100円の保障がされています。
これにより、男性の育児参加率が高まり、家事育児の分担が進んでいます。さらに、柔軟な働き方が企業文化として根付いているため、女性が育児後にスムーズに職場復帰できる環境が整っています。
成功の要因
- 休暇取得に対する社会的な理解の広がり
- 政府による経済的支援の充実
- メディアキャンペーンを通じた意識改革
2. ルワンダ:政治分野での女性リーダーシップ
ルワンダは、国会議員の約60%が女性という世界一の比率を誇ります。
この背景には、1994年のジェノサイド後の社会再建において、女性が中心的な役割を担ったという歴史があります。現在では、女性の政治家が教育や医療分野の改革を推進し、社会の復興をけん引しています。
成功の要因
- 女性の積極的な社会参画を促す法律の制定
- 地域コミュニティでの女性リーダーの育成プログラム
日本国内の具体的な事例
職場での女性活躍推進:リクルートの取り組み
リクルートでは、働きながら子育てをする女性社員をサポートするために、以下のような取り組みを行っています。
- 管理職への登用の推進:管理職の女性比率を2030年度までに50%に引き上げる目標
- オンライン研修プログラム:育休中でもキャリアアップを目指せる学びの場を提供
- リモートワーク制度:柔軟な働き方で家庭との両立を可能に
ジェンダー平等の未来へ向けたアクション
- 日常から変えられること
性別に基づいた役割分担を見直し、家庭内での家事・育児のバランスを改善しましょう。 - 地域社会との連携
地域で開催されるジェンダー平等に関するセミナーやイベントに参加し、知識を深めることが大切です。 - 政策提言に参加する
地方自治体や議員に対して、ジェンダー平等を推進するための具体的な提案を行うことも有効です。
まとめ|私たちが創るジェンダー平等社会
SDGs目標5は、より公正で持続可能な社会を築くための基盤です。
ターゲットに沿った行動を理解し、実際に動くことで変化を生み出すことができます。世界の成功事例や日本の現状を踏まえ、私たち一人ひとりが行動を起こすことで、ジェンダー平等な未来を共に創りましょう。